1960年代から70年代にかけてブラジルで絶大な人気を誇った歌手Elis Regina(エリス・レジーナ)。1982年に36歳の若さでなくなっていますが、彼女の娘Maria Rita(マリア・リタ)もラテンアメリカを代表する歌手として成功しています。
Volkswagenがブラジル進出70周年を記念して、この二人をDeepfakeを用いて共演させたCMがいろんな意味で話題になっています。
このCMは(もちろん生存している)娘のマリア・リタはそのまま出演していますが、母のエリス・レジーナは亡くなっているため、別の人が歌っている映像をとり、AIによる顔認識技術の応用(いわゆるDeepfake)でエリス・レジーナが生きて歌っているかのように表現することに成功しています。(もちろんエリス・レジーナのご遺族には許可を取っています)
このCMをみたブラジルの人々は、国民的歌手のエリスが「復活」したと歓喜する人もいれば、エリス・レジーナは生前ブラジルの当時の独裁政権に反対していたのに、その独裁政権に肩入れしていたVWのCMに使うのは違うといった声もあがっています。それ以上に、やはり技術の進歩の結果とはいえ、故人をこういった形でCMに登場させるのは倫理的に問題があるように思います。これはDeepfakeですが、generative AIで極端な話、俳優が実在しなくても映像を作り出すことができるようになっています。企業にとってはいいことしかないかもしれませんが、本当にそれが芸術やCMとして正しい方向だとは思えません。どこまでAIでカバーすべきか、人間が行うべきかは今後ますます議論されることになるでしょう。